問い:Id(s, t) と Q1〜Q11
Structure Computer は、中心の問い Id(s, t)(s から t へ何歩で着くか)のほかに、系の構造についての 11 種の問い(Q1〜Q11)に答える。どの答えにも証明書が付き、独立の検査器を通ったものだけが返る。答えには確かさの種類(確定・確率的に確定・復元値・統計・結果なし)が付く。種類の意味は「結果の読み方と用語集」にある。
試すページでの計算のされ方
- 「全部計算する」を押すと、Id(s, t) と Q1〜Q7、Q11 をまとめて計算する。Q5 は、Q4 が見つけた最初の保存量を確かめる。
- Q8〜Q10 は追加の入力が要るので、それぞれのカードに入力して計算する。
- 問いによって、どの数の世界について答えるかが違う。
| 問い | 何について答えるか |
|---|---|
| Id(s, t) | 選んだ体(𝔽_q または ℚ) |
| Q1、Q3、Q4、Q5、Q8〜Q10 | 系そのもの(どの値を入れても成り立つ式の等しさ、つまり恒等式として示すので、体によらない) |
| Q2、Q6 | 選んだ 𝔽_q(ℚ を選んだときは素数 11 と 13) |
| Q7、Q11 | いつも ℚ(歩数の上界 B を使う) |
一覧
| 問い | 何が分かるか | 返りうる種類 |
|---|---|---|
| Id(s, t) | s から t へ何歩で着くか、着かないか | 確定、確率的に確定、結果なし |
| Q1 可逆性 | 1 歩を逆向きにたどれるか、その式 | 確定、統計、結果なし |
| Q2 周期構造 | 有限体の上で、軌道がどんな周期に分かれるか | 確定、統計、結果なし |
| Q3 可積分性 | 運動が規則的か | 確定、統計、結果なし |
| Q4 保存量の発見 | 軌道に沿って変わらない式 | 確定、統計、結果なし |
| Q5 保存量の検証 | 与えた式が保存量か | 確定、統計、結果なし |
| Q6 ホロノミー | 軌道が戻ってきたとき、対称性の分だけどう回されているか | 確定、確率的に確定、結果なし |
| Q7 整数不変量の復元 | ℚ 上で t に着く歩数 n | 確定、復元値、結果なし |
| Q8 道の同値 | 2 つの道が同じか | 確定、統計、結果なし |
| Q9 系の同値 | 2 つの系が座標の取り替えで移り合うか | 確定、統計、結果なし |
| Q10 輸送 | 一方の系の結果を、同値な系の結果に移す | 元の結果と同じ種類 |
| Q11 閉じた項の評価 | Id(s, t) を型理論の項として見たときの答え | 確定、復元値、統計、結果なし |
Id(s, t):s から t へ何歩で着くか
1 歩の規則を σ と書くと、答えは次のどれかになる。
- t = σⁿ s ⇔ n ≡ r (mod M):n を M で割って r 余るときに限り、n 歩で t に着く(n が負なら逆向きにたどる)。
- 道なし:何歩進めても戻しても、t には着かない。
- s は正則でない:s から進める(または戻す)途中で、式が定義されない状態(0 で割る)に行き当たる。そこまでに t に着くなら、その歩数を添える。
- ℚ 上で着くときは、着く歩数 n と、ほかに解があるとしたらそれが満たす n ≡ r (mod M) の形を答える。
試すページの入力
| 入力 | 意味 |
|---|---|
| 状態 s、状態 t | カンマ区切りの数(分数も可)。変数の数だけ並べる |
| 体 | 有限体 𝔽_q(q は素数)か、有理数体 ℚ |
| 歩数の上界 B | ℚ のとき、探す歩数の範囲 |n| ≤ B。Q7 と Q11 でも使う |
| 保存量の次数の上限 | Q4 で探す式の次数の上限(既定 3) |
詳細オプション(ふつうは変えなくてよい)
| オプション | 意味 |
|---|---|
| s と t の正則性も必ず確かめる | s と t が正則かどうかを必ず確かめ、その記録を証明書に入れる |
| 確率的な証明を付ける | q = 2³¹ − 1 のときだけ使える。検査器が軌道をたどり直す代わりに、それを示す確率的な証明を検査する。答えは「確率的に確定」になり、誤り確率の上界が付く。証明を付けられる道は 2²⁰ − 1 歩(1,048,575 歩)までで、それより長いときは証明を付けずに答え、結果に付けなかった理由を出す |
| 歩く上限 | 既知の族ではない系で、軌道をたどる歩数の上限(既定 100 万)。超えると「結果なし」 |
| 種 | 計算の中の乱択に使う種。同じ種なら同じ証明書になる |
| ℚ の素数の開始点 | ℚ 上の計算で使う素数を選び始める位置 |
Q1 可逆性
1 歩の規則を逆向きにたどれるか(双有理か)を答える。
- たどれるときは、逆向きの 1 歩の式を返し、行って戻ると元に戻ることを ℚ 上の式の恒等式として確かめる。式が定義されない場所(分母が 0 になる場所)もあわせて示す。系ファイルに逆向きの式(
inverse:)を書いてあれば、それが本当に逆になっているかも答える。 - たどれないときは理由を答える。理由は、別々の状態が同じ行き先に移ってしまうことである(専門的には、1 変数で次数が 2 以上、ヤコビアンが恒等的に 0、異なる 2 点が同じ点に移る、のどれか)。
- 確かめきれないときは、小さい素数の上での行き先の重なりの数による統計になる。
Q2 周期構造
有限体の上で、状態が「周期のある輪(サイクル)」と「途中で途切れる鎖」にどう分かれるかを答える。
- 状態の数が少なければ、すべての状態を数える(確定)。周期ごとのサイクルの数と、鎖の長さの分布を返す。
- 状態の数が多ければ、軌道を標本にとって周期の分布を見積もる(統計)。標本の 1 つ 1 つの周期は、確かめられたものは確定の事実として記録される。
- ℚ を選んだときは、素数 11 と 13 の上で数える。
Q3 可積分性
運動が規則的な「可積分」な系かどうかを答える。
- 互いに独立な保存量が「変数の数 − 1」個そろえば、どの軌道も曲線の上に乗るので「可積分」と確定する。保存量の式も返す。
- そろわないときは、有限体の上での周期の分布の特徴から判定する(統計)。判定は「可積分の兆候」「非可積分(可逆)」「非可積分(ランダム)」「未決定」のどれか。
Q4 保存量の発見
次数の上限(試すページの「保存量の次数の上限」)までで、軌道に沿って値が変わらない式を見つける。
- 多項式の保存量は、見つけた基底と、それで「全部」かどうか(完全性)を確定で答える。
- 分数の形の保存量(有理式)は、見つけたものを挙げる。全部を挙げたとは限らない。
- 挙げた式のうち、互いに独立なものの個数も答える。
- 挙げた式は、どれも ℚ 上の恒等式として証明されている。
Q5 保存量の検証
与えた式 I が保存量かどうかを答える。試すページでは、Q4 が見つけた最初の式を確かめる。
- 保存されるなら、1 歩進めても I が変わらないことを ℚ 上の恒等式として証明する。
- 保存されないなら、1 歩で I の値が変わる具体的な点を反例として示す。
- 1 歩が有理式で書けない系(ラグランジアンで与え、次の点が 1 次の方程式で決まらない系)では、有限体の上での事実か、標本による統計になる。
Q6 ホロノミー
系ファイルで対称性(symmetry: に so: と 2 次形式)を宣言したときだけ答える。宣言がない系では、入力エラーになる。
- 軌道が、対称性で移り合う分を除いて s に戻ってくるまでの歩数と、そのとき状態がどれだけ「回されて」戻るか(対称性の群の元)を、素数ごとに答える。
- その回され方を何回くり返すと元に戻るか(位数)と、回され方の種類も示す。
- 書き方は「系ファイルの書き方」にある。
Q7 整数不変量の復元(ℚ 上の歩数)
ℚ 上で t = σⁿ s となる整数 n を答える。試すページでは、選んだ体によらず ℚ 上で問う。
- 「|n| ≤ B(歩数の上界)の解がある」という前提のもとで、その n を一意に求める(復元値)。
- 範囲に解がないことや、そもそも着かないことが分かれば、確定で「該当する n はない」と答える。
Q8 道の同値
s から出る 2 つの道(生成元の語。たとえば r s^-1 r^2 は左から順に r、s の逆、r を 2 回)が同じかどうかを答える。
- 1 つの規則だけの系では、歩数の合計が同じなら同じ道である(確定)。
- 複数の生成元の系では、2 つの語を合成した写像が一致するかで判定する。一致すれば式の恒等式で、違えば具体的な点で示す(確定)。式が大きすぎるときは標本による統計になる。
Q9 系の同値
もう一つの系と、アフィンな座標の取り替え(x ↦ Mx + c)で移り合うかどうかを答える。
- 移り合うなら、その取り替えを示し、2 つの系の 1 歩が対応することを式の恒等式で証明する。式が定義されない場所どうしも対応するかもあわせて答える。
- 移り合わないことが示せれば確定、どちらとも言えなければ統計になる。
- 取り替え φ を自分で与えれば、それが正しいかを確かめる(x ↦ Mx + c の形でない取り替えでも、逆向きの式があれば確かめられる)。
Q10 輸送
Q9 で同値と分かった系の間で、一方の系について得た結果(証明書つき)を、もう一方の系の結果に移す。元の結果、座標の取り替え、移した結果のすべてを、検査器が確かめ直す。移した結果の種類は、元の結果と同じになる。
Q11 閉じた項の評価
Id(s, t) を型理論(ホモトピー型理論)の項として扱い、2 つのことを答える。
- 構文だけで証明できるか。s と t は別々の定数なので、構文では証明できない。これは系によらない一般的な事実であり、情報はほとんどない。
- この系をモデルとしたときの値。ℚ 上で着く歩数か、道なしかで、情報があるのはこちらである。